ゆ き と の 書 斎

銃 夢 L O が で き る ま で

■専門用語解説1■

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・シナプス

僕の場合、ページごとのイメージや構成を文字で書き記したもののことをこう呼んでいる。他人に見せるためのものではないので、シナリオというほどの完成度はない。

・OmniOutliner(おむに・あうとらいなー)

Omni社のMacOS Xアプリケーション。動作は安定しているが、コラムをドラッグして移動できなかったり、コマンド+右矢印キーで文末に移動できなかったり、印刷時のプレビューが自前でできなかったりと、あんがい使い勝手が悪い。
MacOS 9時代は国産のアイディアストームというアウトライン・プロセッサーを使っていたが、開発が終了してしまったために乗り換えた。

・ネーム(絵コンテ)

コピー用紙などにセリフ、擬音、コマ割り、絵のラフな構図を描いたもの。ここでマンガの具体的な流れが決定される。なお、なぜ業界で絵コンテのことを「ネーム」と呼ぶのかは僕は知らない。狭い意味ではセリフのことも「ネーム」と呼ぶようである。

・写植

写真植字の略。現在はコンピューターを使った電算写植になっているらしい。マンガ家の手描きのセリフを判読し、写植屋さんに注文し、あがってきた写植にのりをつけてマンガ原稿にピンセットで張るのが伝統的なマンガ編集者の業務である。データ入稿になってもあまり変わらないやり方でやっているらしい。

・72dpiグレー

72dpiは解像度、グレーはカラーモードをあらわす。
解像度はスキャンしたりプリントしたりする時に必要になる値で、dpiという単位であらわす。dpiはドット・パー・インチの略で、72dpiならば1インチあたり72ピクセルでスキャン(またはプリント)する、という意味。
カラーモードはたくさんあるが、とりあえずマンガをやる上ではRGB(フルカラー)、グレー(256階調グレー)、モノクロ2階調の違いだけ把握していれば十分である。

・ミリペン

文房具屋や画材屋で売っている、0コンマ数ミリ単位での均一な線が描ける精密フェルトペンの総称。インクに水性顔料インク(ピグメントインク)を使っているものは乾くと耐水性になる。サクラの「ピグマ」などが有名。
弱点はペン先のチップがつぶれやすいことと、消しゴムかけにあまり強くないこと。

各種ミリペン。セーラーのB-1 COLOR DRAWINGがチップの滑りがよくてお気に入りだが、あまり売ってない。

・600dpiモノクロ2階調

ふつう印刷物には300dpi以上の解像度が必要となる。
カラーイラストなどは印刷線数の関係から300〜350dpiが適切といわれている。
「水中騎士」ではマシン環境のかねあいから、300dpiでデータを作り入稿していた。「銃夢LO」では倍の600dpiで入稿している。
モノクロ印刷のマンガの場合、雑誌の紙質と製版の品質のためにデータ作成にはカラーイラストとは違う注意を払わなくてはならない。なぜグレースケールではなくモノクロ2階調で取り込むのかは、「アンチエイリアス」の項目で解説する。

・ケント紙

製図などに使う高級紙。さまざまなサイズ・厚さのものがあるが、僕は現在はコクヨ製のあらかじめB4に裁断されたケント紙をカートンで購入して使っている。平方メートルあたり157グラムと、かなり薄手のものだ。薄手の紙を使うのは、トレス台で透かしながら原稿の裏にデッサンの直しを入れるという手法を多用するためだ。

写真は400枚入りカートン箱。見開きのときは2枚の紙をテープでつなげて使う。役所がB4版の書類を使わなくなったため、B4サイズの紙の生産が減ってきているらしく、心配だ。

・選択範囲

コンピューター上での作業は何をするにもまず選択してからやるものだという。
PhotoShopにおいても画像の一部を「長方形選択ツール」「自動選択ツール(マジックワンド)」「多角形選択ツール(僕はなげなわツールはほとんど使わない)」で囲む事により「アリの行列」と呼ばれる点線のエリアが表示される。ここまではほとんどのペイントソフトでも大昔から可能だったが、ここからの選択範囲の加工と応用の自由さがPhotoShopをペイントソフトの王者たらしめている点である。
マンガのデジタル仕上げの奥義とは、「いかに素早く目的どおりの選択範囲を作るか」だと断言できるだろう。

・アタリ(当たり)

目安。目印。

・PhotoShop(ふぉとしょっぷ)

いわずと知れたAdobe社のレタッチソフト。グラフィックに関わるプロにとってはMac・Winとわずデファクトスタンダードであり、これが使えなければとりあえず話にならないというほどの最重要ソフトである。
僕はPhotoShop2.0英語版から使っている。当時は巨大なバインダーにフロッピーが10枚ぐらいついて圧倒された。シリアルナンバーを半角英数字で打つということすら知らなくて、しばらく使えなかったという記憶がある。

・ハシラ(柱)

マンガのコマとコマのあいだの棒状の区切り部分。

・ホワイト修正

スキャン画像のゴミや絵のミスの修正のこと。
アナログ作業の大昔はポスターカラーのホワイトを溶いて使ったのでこう呼ばれる。ホワイト修正をした上からスクリーントーンを張ると、印刷時に修正痕が見えてしまうことがあり、慎重にならざるを得なかった。
デジタル修正では跡形もなく消し去ることができるので、デジタル万々歳である。

・ベタ塗り

黒ベタの部分を塗りつぶすことを意味するマンガ業界用語。ルーチンワークとなるためアシスタントの代表的な仕事のひとつとされ、ベタ塗り専門のアシスタントのことを「ベタマン」と呼んだ。
PhotoShopではバケツツールを選んでワンクリックでどんな広い面積も複雑なラインも一発で塗りつぶせる。そのためベタマンは必要なくなった。

・枠線引き

大昔は「からす口」という特殊な製図用具を使って枠線を引いた。これはネジの調整によってさまざまな太さの線がだせる上、非常にエッジのきれいな線が引けた。しかし使用にはあるていどのスキルが必要で、手入れを怠るとあっという間に錆ついてしまう繊細な道具だった。
旧銃夢の頃はロットリングの0.5ミリを枠線引きに使っていた。
現在はPhotoShop上で選択範囲を切り、太さ10ピクセルの境界線を引く。このやり方だと断ち切りの部分にも線が引かれてしまうが、ファイルサイズをあらかじめ縦横の枠線の太さ分(計20ピクセル)大きく作っておき、最後のレンダリング時にトリミングする事で対処している。
コマが重なったり、枠線がなかったりといった変則的なコマ割りのときはレイヤーを複製するなどして対処する。
僕の作風は比較的コマ割りがソリッドなのでこのやり方でもうまくいっているが、変則的なコマ割りが多い人は別のやり方を研究した方がいいかもしれない。

・PhotoShop形式(.psd)

作業の途中でできるたくさんのファイルをどんなファイル形式で保存するか。PhotoShopで作業するなら素直にPhotoShop形式で保存するのが確実だろう。
入稿するときだけ、余分なデータがつかないようにTIFFなどで出すようにするとよいだろう。
ウェブでポピュラーなjpgやgifは間違っても使ってはいけない。圧縮ノイズが発生し、印刷時にボロボロの絵にになってしまう。

・アルファチャンネル

苦労して作った選択範囲はメニューの「選択範囲」→「選択範囲を保存」で名前をつけて保存できる。選択範囲は8ビットグレー画像として保存され、レイヤーパレットの「チャンネル」タブから参照することができる。この余分なチャンネル画像をPhotoShop語でアルファチャンネルと呼ぶ。ビットマップ画像なので普通の画像と同じようにペイントしたり、フィルタをかけたり、別のグレースケール画像をペーストしたりできる。

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